2 教職員の意識改革
以上のような募集戦略を実現するにあたっては、当然ですが学長の強いリーダーシップと、教職員の意識改革が必要不可欠です。
国際教養大学では、クラーク副学長の提案により、「暫定入学制度」を導入し、総合得点で合格ラインに達しなかった学生でも、英語の得点が非常に高い学生を暫定的に科目等履修生として入学させるという制度をとっていますが、普通なら教授会はすんなりと賛成してくれないと思います。しかし、国際教養大学では、学長の強力なリーダーシップのもとで、迅速な意思決定と柔軟な大学経営を行うことができています。
私自身、前任校では教授会への対応には本当に苦労しました。教員は理屈ばかり言いますので、その通りにやっていたら絶対に成功しません。それでも、日本の大学ではどうしても教授会を立てて、先生方に理解をしてもらわないと改革が進まないのが現状です。
教員の意識を変えることは確かに難しいのですが、突破する方法はあります。それは、こういうことをやりたいと思えば、まず教授会のトップである学部長や学科主任に理解してもらい、味方につけることです。そこを突破すれば、たいてい教授会はクリアできると思っています。
次に職員ですが、職員が変われば学校はどんどん変わります。しかし、職員はどうしても自分のエリアを守ろうとします。学校改革というのは分業では不可能ですから、職員全体の意識が向上しないとうまくいきません。
そのためには、トップリーダーがどんどん業務命令を出して、「やれ」と言って動かすしかありません。当然、職員からは嫌われるでしょうが、それが生き残りをかけたトップリーダーの役目なのです。そうでないと、一部長クラスの権限だと業務命令が弱く、「やれ」ではなくて、「やって下さい」と言わなければならず、時間がかかってしまうのです。もちろん、業務命令を出すトップリーダーがじっと座っていてはついてきませんから、トップが率先して動いている状況を見せなければいけません。
国際教養大学のすばらしいところは、職員の意識力がとても高いところです。この大学は10億円という低予算で設立されたそうです。県立大学は350億円以上もかけているとのことですから、その違いは一目瞭然です。このような予算規模の小さい中で、当然、人件費にも限りがあるわけですが、職員は夜遅くまで一所懸命仕事をしています。これは大学にとって大きな力になります。高校でも、先生が朝早く来て夜遅くまでいるような高校はどんどん伸びます。何倍も努力しているところが実を結ぶ結果を手にするのです。
実は、開学二年目に、予算の問題もあって地方入試を削減したいという意見が出ました。冗談じゃありません。他の国公立がなぜ二年目から志願者が減っているのか、それは、二年目から早くも手を抜くからです。むしろ二年目は一年目よりもっと動かないといけないのです。そこで、今年は福岡と札幌も加えて六会場に増やしました。来年度はさらに名古屋を加えて七会場にする予定です。
このように、最初は反対していても、だんだんと生き残りのための自覚や市場の認識はできています。そういう点で、国際教養大学の教職員は成長が速いと感じます。
今、国公立でも定員割れになっている大学はたくさんあります。そういう中で、この国際教養大学が勝っている要因は、学長以下教職員が一丸となって二年目以降も気を緩めないで頑張っているということにあるのです。