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Ⅱ 改革時代の募集戦略 ― 大学新聞のシリーズから ―

1 シリーズの分析―なぜこの人が対談の対象になるのか―

 昨年、私は『大学新聞』から依頼されて「改革時代の募集戦略」というテーマで六回の対談を行いました。そこでは、中嶋学長をはじめ、様々な分野の方をインタビューしました。なぜこういう人が対象になったのかというと、先ほどから繰り返し申し上げているように「市場をしっかりと理解する」ということにすべて関連しています。

(1)独立行政法人化の影響を知る

 まず、法人化がどういう影響を与えるかについて、公立大学法人化第一号である国際教養大学の中嶋学長を取り上げました。既に申し上げましたように、法人化の影響について、私学の皆さんはしっかりと把握しておかなければなりません。また、この大学は他とは違った特色のある教育システムを導入していますから、オンリーワンを目指す私学にとっても、その戦略は大いに参考になると思います。

(2)高校現場の動きを知る

 次は、静岡県立松崎高等学校進路課の新井立夫先生です。新井先生はここ数年、進路未定者ゼロという実績をあげ続けて、全国的に注目をあびています。赴任当時は生徒指導さえも困難な状況で、進学実績もないに等しかった学校から、「松高の生徒さんなら」と信頼され、採用されるように至ったのはなぜか。先生の生き様や進路指導の考え方を聞いています。

 ここに取り上げた理由は、高校の先生方がどういう考えを持っているのかを、大学は知らなければならないからです。当然、高校の先生とのパイプを持っていなければ、情報は入りません。私は今、全国高等学校進路指導協議会(全高進)の勉強会にアドバイザーとして参加しているのですが、そこでは、今の高校の先生方が何を悩み、何を考えているのかがよく分かります。皆さんも、そういったパイプをつくって情報を集めてください。

(3)親を理解する

 次に、全国高等学校PTA連合会会長の渡邉綾子氏に、保護者からみた魅力のある学校とはどういうことかを聞いています。今や、親を抜きにして募集戦略は図れません。なぜなら、高校生の進路決断の時にアドバイスをするのは親なのです。親の役割はこれまで以上に重要になってきており、親を理解することが求められているのです。

(4)現役高校生を知る

 次に、現役高校生との対談を行いました。ここでは、高校生の率直な意見を通し、進学を希望する生徒が大学に求めるものは何か、どのような教育、環境を望んでいるのかを知ることで、受け入れる側としての大学のあるべき姿が見えてくると思います。

 ここで私は、君たちが大学に求めるものは何かという質問をしたところ、レベル、ランク、特色は分かるようにはなってきましたが、自分が本当にやりたいと思う分野に進むにはどこを選べばいいのか分からないと言うのです。

 私自身、この対談をする前までは、大学には特色を出すよう繰り返し強調していたのですが、そうではなく、やはり、自分の大学の強みは何か、オンリーワンは何かということを出さなければ駄目だということが分かりました。

 我々の大学時代には、自分がやりたいのはこの分野だと思えば、あの学校だというのがすぐに出ました。その裏付けとして、その学校のその分野には非常に著名な先生が多くいたのです。しかし今やもう分散してしまっています。

 では、これからオンリーワンをつくる場合にどうしたらいいのか。自分の大学はこの分野が一番だというのであれば、やはり、多少お金がかかっても著名な先生を集めたほうがいいのです。今の高校生は、自分に合う大学を自分で探すというような時代になっているのですから、選んでもらえるような学校を目指さなければならないのです。

(5)企業経営から学ぶ

 最後に、ワタミフードサービス社長の渡邊美樹氏との対談を載せています。渡邊氏はある私立高校を経営傘下にしましたが、教育の世界に入って初めて、その運営方法に驚いたそうです。企業だったら間違いなくつぶれていると言うのです。

 彼は、自分の会社は理念を大事にし、全員がそれを共有していると言っていますが、これは学校にも当てはまります。今、いろいろな学校ができていますが、当たれば何でもいいということで横文字にしたり、それが駄目なら別のものというような考えでは、オンリーワンにはほど遠いのです。私学には建学の精神というものがありますから、その理念に基づいたものをしっかりつくり上げることが、オンリーワンにつながるはずです。

 大学も経営を考える以上は、企業と同じように、どういう商品を作ってどうやって売るかということをしっかり考えなければなりません。私も、改革するにあたってどうしようかと考えた時に、他の大学には参考になることはほとんどなく、全部企業からヒントを得ました。企業は我々に先駆けたいろいろなものを教えてくれます。そういう意味で、企業経営から学ぶことも一つの手段であると思います。

2 将来に向けた大学像

 以上をまとめると、まずは市場をしっかり認識し、理解することが大事です。それから、国公立も含めて、大学の今の動きにも注目しなければいけません。昨年から志願者数は減少し、10年前と比較すると半分ぐらいになっています。この深刻な状況を、我々私学はどこまで理解できるかということだと思います。さらに、今年は国公立の独立行政法人化の波を受けています。

 ある資料によると、2004年の志願者数が83万人、今年は79万人、来年は74万人に減少します。問題は74万人の志願者がどこに流れるかということです。短大に約10万人、推薦・AO入試で22万人、上位の国立大学と医学部へは約2万5000人、慶応、早稲田、上智などの有名私大には約1万1500人だと分析しています。従って残りは約38万人ですが、大部分の私学はここの分捕り合戦をしなくてはならないという現状なのです。

 大学は今、三層に分かれています。選抜できる大学、推薦でいく大学、定員割れで全入状態にある大学です。全入大学のうち、全学で定員割れしている大学が30%以上で、一部分割れているのも含めると60%あると言われています。これはもう非常に深刻な状況です。

 そういうことを含めて、将来に向けた大学像を構築して下さい。トップの方はどんどん動いて、改革を進めて下さい。やはり、トップが一生懸命動いているところは、下へとスムーズに流れていくと思います。

 最後になりましたが、私は今、入試・広報戦略についていろいろな大学から相談を受けています。日本の大学はそういう面に関する意識がまだ低いので、これからもできるだけアドバイスをさせていただきたいと思っております。

(本稿は平成17年8月会員セミナー「成功事例に学ぶ大学経営―国際教養大学の挑戦―」において講師が講演した骨子を編集部でとりまとめたものです)